最初の課題は一つの定旋律(カントゥス・フィルムス=Cantus firmus 略c.f.)に第二声を付加することです。これは一定の法則にしたがって自由に作ることができて、定旋律に対して、上声、下声と呼ばれます。
初めは定旋律と同様に全音符として動く第二声を作りますが、この厳格楽節作法(Die Regeln des strengen Satzes)の規則は次の7つに要約されます。
1)許されているのは全音階的な動きだけで、半音階的な進行は禁止される。
2)声部進行は音階的な順進行か、それ以外で上行、下行ともできるのは長短三度、完全四度、完全五度だけです。これ以外には上行の短六度および八度の跳躍が許されるだけです。
厳格楽節での使用可能音程
音程
音階的順進行
○
長短三度
完全四度
完全五度
短六度
X
八度
△
長六度
x
長短七度
すべての増減進行
3)同方向に二つの比較的大きな跳躍をすることはメロディックでないので避けるべきです。次のように全体の音程が七度または九度になる場合には、特に避けるべきです。
音:
そのために六度またはオクターブの跳躍後は、次の例のように無条件で逆行する必要があります。
増四度の跳躍はトリトヌス(Tritomus)(三全音)として禁じられています。これは一つまたは二つの中間音がはさまれた場合にも適用され、禁止されます。
しかし、三全音がさらに進行するものの一部分として書かれているばあいには、許されており実際に使用されています。
三全音の転回、つまり減五度の飛躍も殆どは上記と同様に良くありません。
ここまでの法則は、付加される声部のみに関係したものですが、ニ声の関係については次の法則が適用されます。
4)第一種(1:1)では協和音程だけが使用されます。つまり、長短三度、完全五度、長短六度、完全八度、長短十度です。
ここで並進行、反進行、斜進行のおさらいをしておきます。
並進行:ニ声が同じ方向に進む。
反進行:に声が反対の方向に似にム
斜進行:一声が止まって、他声が動く
例をあげておきます。
5)並行および隠伏五度、八度は禁じられています。つまり五度または八度の関係にある音が、並進行することや、ほかの音程から跳躍して並進行で五度または八度になること(隠伏)はどれも間違いです。
*10度から反進行でオクターブになることは昔の対位法では八度(octava)拍節(battura)といわれて禁止されていました。しかしフックスはすでにこの禁止を正当としておりません。
6)同音は初めと終わりだけに許される。
7)両声の関係は十度を超えてはならない。
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