与えられた定旋律(Cantus firmus)に、第二の声部を付加してゆく研究に入る前に、教会調に触れておく必要があります。それは範例として、歴史的な根拠から教会調を利用しようと思うからです。
教会調は現在用いられている長調と短調の先駆をなすもので、17世紀の終わりごろになって長調、短調が一般的に用いられるようになって使われなくなりました。
対位法の授業での教会調の使用は不用だということがよく言われますが、次のように反論できます。
現代の音楽では(特にスラブ音楽)は和声がいろいろな面で教会調に基づいているのは事実です。
さしあたっての目的のためには16世紀に使われていた6種類の教会調を知るだけで十分です。この基音はハ長調の音階の最初の六つの音の上に作られています。
音:
第七度(シ)からの音階は、主音上の三和音が協和音でないためです。(シとファは減五度です)
教会旋法と現代の音階の根本的な差は半音の位置がいろいろに異なっている点です。
以上の教会旋法では、一定の条件のもとに臨時記号をつけることができますが、これによってある程度現代の音階に近づきます。
次のような通則があります。
1)ドリア調のVI度、リディア調のIV度は、旋律下行の時にH(ロ)がB(変ロ)に下げられる。このBへの下行は旋律的な配慮によって起こる場合もしばしばあります。
2)ドリア調の導音、つまりVII度の音は終止する場合にCis(嬰ハ)に高められます。これによって現代の短調近くなります。
3)ミクソリディア調とエオリア調では導音の終止が高くされます。エオリア調ではそのほかにY度もこれが高められた導音に進行するときは、やはり臨時に高められます。
ミクソリディア調では導音は終止のときは高められますが、さらに主音から出て再び主音に戻るときは、導音としてのFはFisに高められます。
4)フリギア調、イオニア調では旋律的な考慮によって臨時記号を使うことはありません。
5)すべての調のトニカの三和音は、終止の時にはすべて長三度で響いていますので、長三和音の性質を持ちます。
例えばフリギア終止では下記のようになります。
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