重複掛留とは和声が移り変わるとき、二つの声部が遅れて次の和声に入ることをいいます。
音:
零b)の掛留ではDC音間に七度があるので七の和音の第七音と見ることもできます。
重複掛留の両声部は普通三度または六度で下行します。しかし四度または五の進行も許され、四声部以上のときはむしろ快い響きがします。この進行でできる並行五度を掛留五度と言います。
「九の和音」は九度と七度が準備され、特に密接している場合には重複掛留とみなすことができます。
以上のほかに三声部がともに係留する三重掛留がありますが、これは次の項で説明します。
下方からの掛留は順に上行して解決され、普通は掛留音が半音上昇します。特に導音でよく使用されます。
この掛留が単独で使用されることはまれで、普通は上からの掛留と共に使われます。
例c)は「低音の先行」ともいわれ、この三重掛留音は「遅れた和音」として述べられます。次のシューマンで*がその例です。
下方からの掛留は和音と考えることもできます。
*)は減七の転回和音と混同されます。
**)は掛留というよりも、新たに三和音ができたと解釈されます。このような構成を「見かけの和音」と呼びます。
次のような変装的な取り扱いがあります。
迂回は和音に協和する音か、隣接音にゆきます。
ソプラノの掛留がバスでAに解決しています。
予備なしで導入される掛留(予備音が他の声部にあるか、省略されている掛留)を自由掛留といいます。
これはほぼ隣接音と同じに考えることができます。解決音より長いか強拍部にあるかのどちらかでその音が強調される場合には「自由掛留」と呼ばれ反対の場合には「隣接音」と呼ばれます。
次のベートーヴェンの例は自由掛留で、ショパンの例は隣接音とみなされます。
下方からの自由掛留の興味ある例としてWeberの「魔弾の射手」の例をあげます。この三小節目はCよりもHisが正しい表記です。
戻る