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並進行(Gerade Bewegung)
ニ声部が上方または下方にともに同じ方向に進む場合をいいます。
反進行(Gegenbewegung)
両声部が反対の方向に進む場合をいいます。
斜進行(Seitenbewegung)
一声部のみが動き、他の声部はそのまま同一の音に止まる場合をいいます。
ニ声部が五度または八度の音程を保って並進行する場合を「並行五度」(offenen Quinten)または「並行八度」(offenen Oktaven)と呼びます。
並行五度
並行八度
規則:ニ声部が並行五度あるいは並行八度で進行することは禁ずる
a)
b)
a)はテノールとバスの間が並行五度、バスとソプラノの間が並行八度になっています。(バスとソプラノを外声、テノールとアルトを内声と呼びます。)
b)はアルトとテノールが並行五度になっています。
c)
c)は五度になっている声部が同じ声部ではないので、もちろん並行五度ではありません。
(注記)
1.ピアノ曲にしばしば見られる八度による声部の重複は並行八度とは区別して考えてください。これはある声部を強調するために重複させているのですから意味合いが異なります。
2.完全五度から減五度への並行五度は許されます。ただし順次に下行する場合がもっとも良く、逆に減五度から完全五度への進行は禁じられています。
並行五度および並行八度が禁じられる理由
1.厳格な四声部では各声部は互いに平等です。いまあるニ声部が並行八度の進行をするとその声部は他の声部に対して二倍に強調され、各声部間の均衡を破って四声部としての意義をなくすので、並行八度は禁じられます。
2.五度音程は八度についで最もよく協和するので並行五度も並行八度と同様に四声部均衡の点から避けなければなりません。
(注記)
近代音楽になるとこの特殊な音の響きの効果を利用するためにわざと並行五度が使用されるようになりました。
ニ声部が並進行である音程から五度あるいは八度へ進行することを「隠伏(いんぷく)五度」(verdeckte Quinten)および「隠伏八度」(verdeckte Oktaven)と呼びます。
規則:
I.上声部が順次進行、下声部が跳躍進行してできる隠伏五度および隠伏八度はよい。ただしこのような隠伏八度が根音以外の音を重複して成り立つ場合は避けねばならない。
II.上声部が跳躍し、下声部が順次進行する場合には次の二つの条件を必要とする。
1)両声部がともに外声にあってはならない。すなわち両方またはいずれか一方の声部が内声であることが必要である。
2)同時に外声部が反進行する場合のみ許される。
(上声の跳躍する場合)
III.両声部がともに跳躍する場合は不良である
ただし隠伏五度が同和音のなかで起こる場合、すなわち三和音の位置展開によっておこる場合は例外である。(例c)
(両声の跳躍する場合)
楽譜:
W.五度および八度の解除も跳躍して並進行を避けたほうが良いでしょう。
(注記:並行五度、並行八度は演奏した場合にはすぐ気が付きますが、隠伏五度、八度はかなり清潔な耳を持っていないと分かりません。)
二声部が同じ音になったときに「同音」(Einklang)が生じます。
規則:並進行で同音に達し(隠伏同音)、あるいはこれを解除することは不良である。(例a)) 同音は斜進行あるいは順次的反進行により到達し、あるいは解除するのがもっとも良い(例 b)、c))
次の例はあえて不良とはいえないものの、避けられる時は避けたほうが良いでしょう。
すべての音階の第七音は半音の上昇進行(上行)によって主音に到達しようとする力を持っています。この第七音をその音階の「導音」(Leit-ton)と呼びます。つまりハ長調(C-dur)ではシ(H)の音、イ短調(a-moll)ではGisが導音です。
(注記)
1.自然短音階の第七音には導音としての機能がありません。
2.短音階の第六音は第五音に向かって下行したがる力を持つので下行導音と呼ばれますが、特に指定しない限り導音といえば第七音を意味します。
導音が特に属和音の第三音として上声部にある場合には、順に上昇進行で主音に導くのがもっとも自然です。(例 a))。しかし和声進行の都合により順に下行して第六音に達することもできます。(但し長調に限ります。例b))。これに反して跳躍進行することは同じ和音の連続以外は避けなければなりません。
規則:導音の重複は絶対に禁ずる。
隣接しない音の上にできる三和音は互いに一つまたは二つの音を共有します。これが共有音です。
規則:
I、隣接しない音の上にできる三和音の結合では共有音を同じ声部にとどめ、他の声部は最短の道を進むのが最も良い。
II,隣接する音の上にできる三和音の結合では並行五度および並行八度を避けるために外声部を反進行させる。
I−Vの結合
(注記)
1)アルトとバス、2)ソプラノとバス、3)テノールとバスの間にある隠伏五度はみな許されます。
2)上記の結合三つの例で共通音はg.です。
I−IIの結合
V−IVの結合
I−IIの結合
V−IVの結合
この場合、次の例のように上声が跳躍して下声が順次進行する隠伏五度ができますが、一方が内声にあり、しかも外声が反進行しているので決して不良ではありません。
楽譜:
個々の声部の動きについては次の点に注意をしてください。
1)上声部は旋律を構成する声部ですから常に旋律的であることに注意を払ってください。しかし和声的な基礎ができるまではできるだけ跳躍進行を避けて、共有音は保留して、他の場合でもできるだけ順次進行を使ってください。ただし同じ和音が連続する場合は例外です。
2)内声では特に跳躍進行は避けてください。共有音を保留することとできる限り順進行することが上声の場合よりいっそう必要になります。
3)低音は六度まで大きな跳躍をすることができます。また八度の跳躍も使用できますが、この場合には常に反進行しなければなりません。
4)すべての声部で七度の跳躍、増音程の跳躍は同じ和音の連続以外は禁止されます。次のように七度の跳躍はによる反進行で並行五度や並行八度を避けてはいけません。バスをオクターブ上に上げれば並行八度が明瞭です。音響的には並行八度と同じです。
減三和音と増三和音は他の三和音にくらべて独立性にとぼしく安定性のない和音です。そのためこれらの和音を使用するときは特別の注意が必要です。
1)VII度の減三和音は基本位置での使用をできるだけ避けること。理由は
1.減五度は協和音程ではない
2.根音が導音であるため重複が許されない
2)減三和音と増三和音はともに、それぞれ二つの特定の安定した和音の間にはさんで使用しなければなりません。これについては後述します。
下記の三つのバスをテーマにして四声部の例を開離位置と密集位置で示します。
範例1
範例2
範例3
開離位置
密集位置
a)この重複は「同音での重複」と呼びます。内声にできた隠伏五度をさけたいならばテノールで三音Cを重複することも可能です。
開離位置
同音は斜進行で到達して、解除しています。
密集位置
開離位置
密集位置
*)この三音の重複は同音によるcの重複とともに可能です。
[練習問題2]
(省略)
前述の殆どすべての例題は一定の和音列になっておりIV−V−I またはII−V−Iで終わっています。これを「終止形」(Kadenz)とよび、この和音の並び方がすべての音楽の基本になっており、複雑な和音列もこれを基礎としてつくられます。
これは副三和音(II,III,VI,VII)を主三和音(I,IV,V)の代理としての和音(代理和音)と考えると分かりやすくなります。これについてはリーマン(Rieman)の機能論理(Funktionsthorie)あるいはテュイレ(Thuille)の教科書に説明されています。
ハ長調(C-Dur)の終止形
終止形で副三和音を主三和音として代用する場合、主三和音と二つの同じ音をもった副三和音を代理和音とみなすことができます。
つまりI度にたいしてはIIIまたはIV度。IV度にたいしてはIIまたはVI度。V度にたいしてはIIIまたはVIIです。そこで次のような終止形を作ることができます。
代理和音としてVII度を使う場合は後述します。
V−VIの連合がいわゆる「偽終止」(Trugschluss)をつくります。これを利用して二つの終止形を結合して重複終止形を構成します。
例1
この重複終止形の根音位置の連合で開離位置を使用する場合、初心者は次の二つに注意してください。
a)低音は最初の主和音から次の下属音にゆくのに、五度下行すること。(四度上行してはならない)。四度上行すると第三番目の和音との間に不正の同音が生じて避けられなくなります。
b)第四番目の和音(VI度)の第三音(C)が重複される場合は、旋律が単調になるのを避けるためこの二つの共有音のうち旋律以外の音をそのまま止めるのがよいです。(例2)
例2
和音を結合するとき、バスの動き方により強進行と弱進行に区別します。
強進行 |
四度上行および五度下行 |
弱進行 |
二度下行 |
二度上行 |
三度上行 |
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三度下行 |
副三和音での五度上行、(四度下行) [II^VI,VI−IIIなど] |
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主三和音からの五度上行、(四度下行) [I-V, IV-Iなど] |
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||
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|
古典音楽では大部分が強進行で、なかでも五度下行がもっとも重要であり、かつ多く使用されます。
短調では第六音と第七音の間に増二度音程があり、特に増二度が外声にあるときは運声上の注意が必要です。
V−VIの連合の場合は特に注意する必要があります。
増二度を避けるには次の二つの方法があります。
1.後にくる三和音の第三音を重複する。
例1
2.導音を下げて下行進行を可能にする。
例2
内声にある増二度進行は避けられる場合は避けるべきです。例えば次の例1)は例2)よりも良です。
短調では旋律的短音階の下行と同じように時々導音を半音下げることがあります。このような導音は本来の導音としての機能を失いますので、次の例のように重複することもできます。
VIIおよびIII度の和音は減五度または増五度ですので、普通はできるだけ使用しないようにしますが、上の例のように導音を下げてしようすることができます。
II度の減三和音は短調では根音が導音ではありませんので、重複できます。しかし減三和音は基本位置での響きが良くないので、使用する場合にはIVまたはVIのあとに付属として用いるべきです。
II度の減三和音の使用
III度の増三和音も独立和音としての使用はまれで、I,V,VI度に付属して使用されます。
III度の増三和音の使用
短音階の第六音の上昇は旋律的短音階の上行のように(例えばイ短調(a-moll)でのFis)まずII度の三和音で問題になり減三和音が短三和音になります。
Dur−moll
短調での三和音連合の範例
ハ短調(c-moll)の重複終止形
[練習問題]
(省略)