音楽辞典によれば、「17−18世紀のヨーロッパで広く行われたもので、鍵盤楽器またはハープ、リュートなどの撥弦楽器奏者が、与えられた低音の上に、即興で和音を補いながら伴奏声部を完成する方法、およびその低音部をさす。」と解説されています。
現在の演奏形態は殆どが通奏低音部=チェンバロ+チェロで演奏されています。現代のピアノにくらべ音量の小さいチェンバロのバスパートをチェロの音量で補う効果や、バス声部を弦楽器で弾くことによりバス声部がより個性的になるなどの効果があります。バロック時代を特長づける通奏低音は演奏するととても楽しいものです。
現代のピアノ+チェロという組合せでは低音が強力になりすぎてオリジナルの効果は期待できません。ピアノだけの方が良いでしょう。通奏低音をチェンバロを省いて演奏する場合にはやはり上声部とバスが離れすぎるので一般的には貧弱に響き普通の演奏会では行われません。しかし清潔な響きにも魅力はあります。
ここに、ヘンデルのトリオソナタの例を挙げて見ます。2台のヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ヘ長調です。(ベーレンライター版 ヘンデル全集より)
これは原譜ですが上声部2声とバス声部の三声部で書かれておりバスの上に数字がかかれております。これがオリジナルの通奏低音譜です。明らかにトリオです。
現代で数字付バス譜とみてそのまま演奏できる人は殆どおりませんし、また和音を埋めればよいというものでもありませんから、出版されている楽譜は数字付バス譜を解決したチェンバロ用のパートが用意しております。
上記の楽譜の解決譜の例を挙げます。
この楽譜でバスパートはチェロ(またはヴィオラ ダ ガンバ)で、そして下から2段の大譜表のパートはチェンバロで弾きます。 全体の演奏者の数はトリオソナタでも4人です。
右手については、校訂者によって解決譜が異なります。
通奏低音の奏法ということになりますと、和声法の知識があれば大まかには分かりますが、専門的にはイタリア式、フランス式、ドイツ式などで使用する音域など細かい作法の違いがあるようで本格的にこなすには相当の勉強が必要になります。
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